蜜林檎 *Ⅰ*
雅也は作業の手をとめて
蒼一に向かって小言を言い出す

「ライブだとさ
 芸能人に恋焦がれて
 本物の彼氏もできないんだよ
 あっ、ソウ
 おまえ、彼女はいるのか?」

「いませんけど・・・」

「もうこっちに住むんだろう
 どうだ
 アンと付き合わないか?」

百合は余計な事を、それ以上
雅也が言い出さないように
腕を強く掴んだ。

「お父さん・・・」

話が聞こえてきた杏は、玄関先
の靴を持ってお店の方から
出て来た。

「お父さん、何、馬鹿な事を
 言ってるの、私は誰とも
 恋愛する気は無いから
 
 ソウちゃん、いらっしゃい」
 
「おう」

蒼一は、ドレスを纏った綺麗な
杏の姿に戸惑う。
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