蜜林檎 *Ⅰ*
「あの・・・」

「はい」

「ライター持ってません?」

「ごめんなさい、私
 たばこは吸わなくて
 
 あっ
 ちょっと待ってください」

鞄の中をガサガサ探して
居酒屋のマッチが出てくる。

「これ、どうぞ
 使わないので」
 
お店のマッチを受け取る、その
女性は、とても素敵な笑顔で
杏を見つめた。

その瞳は、カラーコンタクトで
兎のように赤く、杏は、つい
見惚れてしまう。

「ありがとう、わたし
 まりあって言います
 あなたは?」

「杏・・・です」

「あんずちゃんって本名
 すごく、かわいいお名前ね
 よろしく、じゃあ有り難く
 マッチを頂くわね」

彼女は、颯爽と出て行く。
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