蜜林檎 *Ⅰ*
「答えは分かってるよ」

そこに、一台の高級車
が止まる。

「ソウちゃん・・・」

「おまえ、昔から
 言ってたもんな」

制服を着た中学生の頃の
杏は大人びた表情で
言い放つ。

『私は
 誰とも恋なんかしない
 結婚なんかしない』

「俺には、おまえの気持ち
 がよく分かるよ
 俺も、親のゴタゴタの
 せいで同じように思った
 時期があった」
   
『愛し合った挙句の果てが

 これなのか・・・』
   
「でも、この年になって思うの
 は、親も元は俺達と同じ子供
 なんだって事、月日を重ねて
 大人になってしまっただけで
 子供と同じように問題にぶち
 当たればそこから目を逸らし
 誰かの助けを求め楽な方へと
 逃げ出す・・・」
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