蜜林檎 *Ⅰ*
お店の方へ歩き出す
杏に向って、高級車の
クラクションがなる。

杏は、その音に驚き
車の方を見ると
一人の男性が立っていた。
 
黒い服を着たその男性は

・・・

杏の瞳に樹の姿が映る。

「どうして・・・」

「まさか、こんなところで
 杏ちゃんに会うなんてね
 
 こんな偶然が
 何度もあるんだね
 確か、三度目」

「三度目って
 覚えてるんですか?
 
 あのライブの日の事を
 ・・・」
  
「立ち話もなんだから
 車にどうぞ」

杏は助手席に座り、隣に
座る樹の綺麗な横顔を
間近で見つめた。
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