蜜林檎 *Ⅰ*
「覚えてるよ
 最前列、ど真ん中のチケット
 を使わずに、確か・・・
 5列目ぐらいで見てたよね」
 
「7列目です
 あの、ステージから
 ファンの顔って
 分かるんですか?」

「ほとんど分からないよ
 ライトが眩しくてね
  
 でも、真ん中なら
 10列目ぐらいまでは
 みえるかな・・・
 その状況によるけど」
 
「1列目のチケットは
 大切に保管してます」

「使わないで
 保管してるんだ
 おもしろいね」

声を出して笑う樹の姿を見て
杏の胸は高鳴る。
  
「煙草、いいかな?」

杏は頷き、樹は窓を開け
煙草に火をつけた。

「ところで
 さっきの人は彼氏?」

杏は彼氏では無く
幼馴染だと即答する。
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