声恋 〜せいれん〜
「どうして、わたしをここに連れてきてくれたんですか?」
ふたりで砂浜を歩きながら、感動でにじんだ涙をこっそりとぬぐう。
「さぁ、どうしてだろうな…だれにも教える気はなかったんだ…ただ、陽菜には知っててほしかった」
「…じゃあ、知ってるのはわたしだけなんですね? ふふっ、うれしい。うれしいです、蓮也さん!」
ふたりの…ふたりだけの秘密、ですよね。
「蓮也さんの大切な場所をおしえてくれて、ありがとうございます!」
わたしがそういうと、蓮也さんはうれしそうに、まぶしそうにそっと目を細めた。
あぁ~、胸がほわほわしてきた。
「ああ、そうだ。やりたいことがあったんだ」
「やりたいこと…?」
「見つけたんだ…おまえをオレのなかにとりこむ方法」
「え…?」
「さっきの店で買った、あのペンダント」
そう言ってあのお店を出たときからすでに身につけていた豆電球のペンダントを、彼は手にした。
それを海に向かってまっすぐにかざすと…
「ああ…いいかんじだ」
そう言って満足そうにうなづく蓮也さん。
「え~、なになに? なんのおまじないですか、それ?」
「ふっ…知りたいか?」
「もちろん! 知りたいですよ~」
「ダメ。教えてやんない」
「ええ~、ケチー。蓮也さんのイジワル~。それ、わたしがあげたんですよー」
「ははっ、そうだったな、…ごめんごめん…じゃ…ほらっ」
蓮也さんがわたしのうしろに歩いてくる。
そっと、わたしの背後によりそった…。