声恋 〜せいれん〜
遊園地につくまで三時間…。
園内は人、人、人…。
何かに乗るにも、食べるのも、行列で待つ…待つ…待つ。
あばばば…すごく寒いし…。
なんか…優一くんにムリ言っちゃって、悪いことしたかな…?
そう思ってたのは、最初だけだった。
だって今夜の優一くん、すごくやさしかった。
わたしのあげたマフラーをまいて、「いや、全然。寒くない」って言ってくれた。鼻の頭、ちょっとだけ赤くしながら。
ごめんね。彼女でもないのに…許してね。
でも…やっぱりうれしい。
家ですごしていたら、すごくさびしかったと思う。なんどもなんども、蓮也さんのことを思い出して泣きそうになったと思うし(そ ういいながら思い出しているけど)。ひょとしたら恨んでいたかもしれない。でもこうして優一くんといっしょにすごせたから、そうならずにすんだ。
ありがとう…優一くん。
「ねぇねぇ、観覧車のろうか」
「あ、うん。…ぼく、女の子と二人で乗ったことない。はじめてだ」
「それって、なんの告白?」
「あ、いや、ただ、なんとなく」
「ふっふぅ~ん、おぼえていますよぉ~。むかし、話したよね。観覧車で男は女の子のどこを見るかって。足と、横顔と、耳元と、う・な・じ、ですよねぇ~」
そういうわたしの今日のファッションは、白のコートで黒のタイツにミドル丈のぽんぽんがついたキャメル色のブーツだ。
「ゴメンねぇ~、足、見えなくて。防寒対策バッチリで」
「あ、あれは男の一般論だよ…べつにぼくは…」
「…べつに、ぼくは、なに? かなぁ~」
ちょっといじわるして、優一くんの顔を、のぞき込む。
そしたら黙って、スタスタ歩き出しちゃった。
もぉ~、子どもなんだからぁ~。恥ずかしがっちゃって。マテマテ!