声恋 〜せいれん〜
ようやくまわりの人ごみから解放されて、静かになった。
わたしたち二人を乗せた空間が、ゆっくりと、夜景と夜空をプレゼントしてくれる。
高い所から街をながめると、あのときのことを思い出す。
はじめて交差点で蓮也さんにあって、そのままいっしょに飛行機に乗っちゃって…帰りの機内で見た、あのきれいな街の灯。
機内の窓に映った、あなたの美しい顔…瞳…。
そうやってふと窓を見つめていたら、その向こうの優一くんと、目が合った。
あっ、と顔を伏せる。
そうだった…今は優一くんと、いるんだ。
なんだろう…この不思議な感覚。
「なにか…悲しいことでも思い出してたの? 顔が泣きそうになってたよ」
優一くんの心配そうな声が、心にしみる。
「桜木さんの耳って…すごくキレイだね」
「えっ…」
びっくりして、耳をさわる。
「あれ、そんなマジ顔しなくても…『いやだぁーっ、どこ見てんのーっ』ってツッコまれるとおもったのに」
そういって笑う優一くん。
「ん…もう、このド変態オタク!」
「…それってけっこういいすぎじゃない?」
「…」
「…」
沈黙がくすぐったい…けど、いやじゃない。このままずっとこうしていられればいいのにな…。