声恋 〜せいれん〜
第八章 「旅行」と「初体験」
車で三時間。
遠くの青かった山々が近くなると、はっきりとした緑に囲まれる。
みんなうれしそうに呼吸して、そのはきだした清冽な空気に包まれる。
「きもちいーっ!」
窓からふきこむ生きた風に、大声で叫ぶ。
「ははっ、そんなにうれしいか」
となりで運転しながら蓮也さんがほほ笑む。
来たきたー! その笑顔、待ってました!
ついに来た!
蓮也さんと二人で、二泊三日の夏旅行。
わたしが、わたしたちが、変わる日がやってきた。