声恋 〜せいれん〜
「ピッチが、ピッチがいきかえったよ」
タカシくんがそうさけぶと、ふわふわと飛んでいるそれはいいました。
「ばかだなあ、きみは。いちどしんだものが、いきかえるわけが、ないだろう」
それは、にこにこと、おもしろがるように、いいました。
「だからきみは、ピッチとちがって、あしもないし、せなかにへんなカラを、しょってるんだね」
ピッチだけど、ピッチじゃない。タカシくんはふしぎなきもちでいっぱいになりました。
「へんなカラとは、なんだい。ぼくの、おうちだぞ。よるになったら、このなかで、ねるんだぞ」
そのピッチのユウレイは、ちょっとおこったようなかんじで、いいました。
「しんだのに、ねるんだね」
「ユウレイだって、ねむくなるんだよ。おなかがすいたら、ごはんもたべるよ」
「へえ、しぬのって、たのしそうだね」
タカシくんは、わらいました。
「たのしくは、ないよ。きみとこうして、またあえたから、うれしいんだよ」
…『トリタマちゃん』はわたしの大好きな絵本。飼ってた鳥が死んじゃって、幽霊になってかえってくる話だ。
わたしの朗読が終わると、最初は「絵本だ」ってバカにしてたクラスの空気が涙にぬれたように湿ってた。
その空気がいったん落ちつくのを待って、先生が言った。
「いい朗読だったぞ、桜木。心がこもってた」
そしてもう一度。
「いい朗読だった」
グスッて鼻をすする音がした。
みんなもそう思ってくれたかな。
えへへ、わたしだって、ガマンしてたんだから。
泣かないように、ずっと。