声恋 〜せいれん〜
「陽菜…今日はつきあってくれて、ありがとね」
一番したのミキちゃんをおんぶしながら、すずが言う。
「ううん…楽しかったよ。なんか、暁人に…弟に会いたくなっちゃった」
わたしは智己くんをおんぶしながら言う。静かに寝息をたてている智己くん、体温が、すごくあったかい。
「うん…やっぱ…離れてても、どんなやつでも…家族なんだよな…」
すずが家族というものをどういうふうに思っているのか、彼女がいままでどれだけ苦労をしてきたのか詳しくはしらないけど、きっといろいろあったんだろうな。
「あ、と…えと、陽菜に…悪いんだけど…もうひとつお願いがあるんだけど…いいかな?」
急に足を止めて、真剣な面持ちで話しだす。
「え? いいよ? なになに? なんか大変なこと?」
「いや…大変ってわけじゃないけど…」
「なになに? なんなの~、ハッキリ言いなよ、すずらしくない~」
「ん…と、一緒に行ってもらいたい所があるんだ」
「え? どこどこ? 遠い所?」
「んーと、すぐ近くなんだけど…」
「だ~か~らぁ~、どこ? ハッキリ言えよぉ」
「ここのコンビニ!」
そう言ってすずは目の前の建物を指差した。