声恋 〜せいれん〜




「いらっしゃいませー」




その声を聞いた瞬間、すずの体がビクーッ! となった。




え、いったいなにを、そんなにおびえているの…?




「あれ? すずちゃん久しぶり。お、今日もタク坊たちのお守りか~。いそがしいのに大変だね」




店員の、ちょっとビジュアル系の髪型と顔立ちをした男の子がすずに声をかける。




それでまた、すずの体が「ビクーっ!」となった。ちょっと、反応しすぎなんですけど…。これは…もしや…?




「あ…光紀、さん、今日もバイトだったんですか、おつかれさまです…いや、この子たちがアイス食べたいっていいだして…ほんとにもう…」




なんか、すずさん、急にしおらしくなっちゃったんですけど…髪くるくるいじりまくってるし…。




「あ、え、と、こちら、同じ声優の学校に通っている陽菜…え、と、なんだっけ…そうそう、桜木陽菜さんです。かわいいでしょ、この子。まだ19歳なんだよ~、清楚で、ウイウイしいし、あたしなんか、ちっちゃくて、チンチクリンで、全然だめっていうか…もうおばさんだし…」




「ははっ、おばさんって。すずちゃんかわいいよ。それにテレビでも、いつもがんばってるじゃないか」




「えっ!? かっ…いやっ、えと…テ、テレビ、見てくれてたんですか? うれしい…ていうか、はずかしい…です…」




おおおっ、ぶりっ子するどころか逆にちいちゃくなっちゃってるんですけど! なんかもう、耳が真っ赤だし。見てるこっちが照れちゃうよ。でも、かわいい、かわいいぞ! すず!



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