声恋 〜せいれん〜
「街の明かりを…ながめてた。心が落ちつく…。あの一つ一つは、幸せなものもあれば、苦しみや悲しみもある。誰かが傷ついて泣いているかもしれない。自分には責任のないことで苦しんでいるかもしれない。そんなものの存在すら、あの下の明かりはすべて一様に、美しい姿に染めあげる。一つ一つの強い感情も、こうしてまとめて眺めてみると、すごくやわらかな光にかわる。すると汚い自分も少しだけ、きれいになれた気がする…」
「きたないだなんてそんな…! そうやって、相手の人にも、わたしにも、自分にも嘘をつけない蓮也さんは、すごくいい人です…! あ、これはわたしがファンだから言ってるんじゃないですよ、一人の人間として、そう思うんです。ファンとしてのわたしだけだったら、憧れの蓮也さんに見つめられるだけで、心臓止まっちゃいますもん!」
それを聞いて、しずかに蓮也さんは笑った。やば…ほんとうに死んじゃうかも…。
「…じゃあ…止めてあげるよ…殺してあげる」
いきなり蓮也さんが耳元でささやいた…。
熱い息が、言葉が、わたしの耳をなぜまわす…。
「きゃあ!!! (耳が)犯されるぅ!!!」
静まりかえった機内にすさまじい緊張が走ったのがわたしにもわかった。