声恋 〜せいれん〜




『川上からの川風で、からだが かさかさになった きゃしゃなカッパ(カッパさんかわいそう!)』




「え?! わたしってこんな声なの?! うーん、なんかへん! ていうか恥ずかしい!」




「いつもぼくらが聴いている桜木さんの声はこれだからね。まだうまくしゃべれないからこもってるかんじだけど。これをもっと、誰にでも聴きやすいようにしないと。『聴いている人を意識すること』、これが第一歩だね。もうきみは自分のためにしゃべってるんじゃない。聴いてくれる人のために、しゃべるんだ」




「うん!」




「桜木さんの声は…とても元気があって…力強い。桜木さん自身が持つ、命のエネルギーのようなものを感じる。それが声にのっているから、聴く人を元気にする。悲しみや苦しみの演技でも、そこに命が吹き込まれていないと、その感情は伝わらない。桜木さんのこの特徴を生かして、あとはそれをより正確に伝える技術を身につければ、ぼくは無敵だと思う」




「…」




「そのためには変な癖をつけずに、自然にしゃべれることだ。最初に演技ばかりを意識してやっちゃうと、それこそ不自然になっちゃうからね。しゃべる速度、句読点の意味と活用、語尾をはっきりさせ、リズムもチェックする。自然にしゃべれるようになってはじめて、いろんな役をこなせるようになるわけだからね」



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