声恋 〜せいれん〜




わたしらしさって、なんだろう。




いままでアニメの真似をしたり、ゲームキャラの役柄になりきっていたときは、ただ夢中だった。




でも、声優として役を演じるときは、“わたし”というものはいるのだろうか。




キャラの性格そのものをしっかりと演じていれば、「桜木陽菜」はいらないんじゃないのかな…?




わたしはいったい、なにができるのだろう。




この世界に対して。




命を与えるべきものたちに。




そんなとりとめのない無能感におそわれると、世界も自分も、なんにもない、まったくの空っぽになったような気分になる。



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