ぼくたちのケータイ小説の作り方
4.7 キャラクター例 その2
では具体的に、キャラの特徴ってなんだろう、ってことをお話ししたいと思います。
ぼくが今メインで描いている恋愛小説『声恋』の主人公を例にあげます。
桜木陽菜(さくらぎ・ひな)は高校生。
外見はこうで…好きな食べ物はこうで…、と細かいところはいろいろありますが…。
一番重要かつわかりやすい「キャラの特徴」というのは、「作品のテーマに沿ったもの(もしくは沿うためにあえて出した反対のもの)」です。
『恋声』のテーマは「声で想いを伝える」ことです。そしてそ陽菜は、そのために声優になろうとするキャラクターです。そして声優になるための大事な資質を備えているキャラクターにしたいと思いました。
「声優心構え」みたいなものを調べていたら、陽菜のすぐれた部分と声優としての資質がうまく合っている部分を見つけたので、それを陽菜の重要な特徴にしたいと考えました。
それは「解釈力」、人の心をわかろうとする力です。
演じるキャラ(他人)の心をわかろうとする。自分の頭や心で考えてあげられる。そしてそれに見合った言葉をかける(つくる)ことができる。
もちろんそんな陽菜でも、相手の心がわからなかったり上手い言葉をかけられずに傷つけてしまったりと、苦労することがあるでしょう。でもそういう経験も「解釈力を持っていたからこそわかること」であり、だからこそ、よりいっそう、わかってあげられるようになるんですよね。
完璧ではなくとも、そういう人物でいてほしい、というぼくたちの気持ちが陽菜にはこめられています。
そして、それに触れた多くの読者が、「人の心をわかる(わかろうとする)こと、声をかけてあげられる喜びと責任」を感じとれるような物語にしたい、そう思って陽菜を作り上げました。
この特徴とテーマをもとにして、陽菜の環境(応援してくれる仲間や恋人、先輩後輩、障害としてのライバルや状況)ができあがっていき、それらとの関係を進めることで、物語もどんどん動いていくことになります。