NOAH
「九十七年……二十一年前か。発案者ディージェ=ルヴァンニール…。…母さん…?」
 
母が発案したプロジェクトならば、緑に関するものだろうか…。
 
操作してみるが、ロックがかかっているらしく、その先は見れなかった。
 
誰かに聞けば分かるのだろうか…。レイは研究室を出た。

 
長い廊下の先にあるラウンジに、いつも指導してくれている研究員二人の姿を見つけ、足早に近づく。

「…とは思わなかったな…」

「まったくだ…」
 
何の会話だろう、と足を止める。

「正直驚いているよ。まさか、ディージェ様があそこまで毛嫌いしていた息子が、同じ道に進むなんて」

「ああ。彼女、言ってただろう。全てはヒューイ様に取り入るため…。息子なんか本当は欲しくなかったって…」

「それを思い出すと、レイ様が哀れでな…」

 
レイは後ずさりして、壁に背を預けた。

(なんだって…?)
 
心臓が、どくんと波打った。

「産んでから、一度も会いに行っていないそうじゃないか…。彼女の功績は凄いけど、子供はかわいそうだよなあ」

 
研究員の自分を哀れむ台詞が、容赦なく身体を貫いた。
 
一気に冷たくなっていく手足。それを無理やり動かしてそこから立ち去った。

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