NOAH
いつも母などどうでもいいと思っていた。
 
けれども、その言葉はショックだった。
 
憎んでいると思っていた。最初からいないものだと思い込んでいた。
 
それでも、いつも心のどこかで追い求めていた。
 
あの植物達を見た時に、もしかしたら母も同じ気持ちでいてくれたのではないかと期待して、追い求めて、始めた研究──。
 
ノアや皆のため、というのは建て前。やはり一番は自分のためにやったこと。

(馬鹿みてえ) 
 
そんな自分が悲しくて堪らなかった…。


「ちくしょうっ!!」
 
目に留まった白い鳥の置物を乱暴に掴み、床に叩き付けた。
 
ガシャアン! と派手な音をたててそれは粉々に砕け散る。
 
女達の悲鳴が上がる。その中心に……ノアがいた。


「…レイ様、どうなさいました?」
 
付き人を従えているので、おしとやかモードのノア。
 
そんな彼女を一瞥すると、レイは走り出した。

「レイ様!?」
 
ノアの呼び止める声がするが、構わず走った。

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