NOAH
誰に聞いても分からない、謎のプロジェクト。
 
緑を広げる研究をしていた母が残したものなのだから、それに関するものだと思うのだが、研究室の誰も知らないというのが引っかかった。
 
無理にでも開けてやる、と意気込んではみたが──一向に開かない。
 
フーッと息を吐き、上半身を後ろに倒して伸びをした。すると。

「お仕事頑張ってるう~?」
 
思い切り愛想のいい顔でヒオウが見下ろしていた。

「…ああ…」
 
ヒオウの登場に少々驚きつつ、レイは姿勢を戻した。

「お前いつも気配ねえんだよ。脅かすな」

「あら、お仕事の邪魔しちゃ悪いと思って、しのび足で来たのは優しいお兄ちゃん心なのに」

「うげえ~」
 
レイはわざとらしく顔をしかめて見せた。
 
しかしそれもいつものことなので、ヒオウも気にすることなく、レイの隣に座った。

「ああ、これ? レイのお母さんのヤツで分からないのがあるって言ってたの」
 
そう言いながらパソコンのモニターを覗き込む。

「そう。何を入力しても受け付けない。いい加減疲れた。……まあ、意地でも開けてやるけどな」
 
前向きな発言をするレイに、ヒオウはニマーっと笑った。
 
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