NOAH
一度だけ触れ合ったあの夜以来、再び肌を重ねる事はしていない。けれど、心の奥でしっかりと結びついていた。

それはもしかしたら錯覚かもしれないけれど…。しかし、ノアも同じ気持ちでいると確信していた。
 
彼女をヒューイの元へ行かせるのは本当に辛いけれど。
 
割り切るように努力している。
 
それは仕方のないこと。
 
ノアには、ノアの事情があるのだから。

 
彼女は辛い顔などしない。
 
だから、レイも苦しみに耐えた。

 
恐らく、ヒューイがこの国で権力を失うまでこの状態は続く。それまで、誰にも知られてはいけない。この想いは隠し通さねばならない。
 
ノアと、二人で生きていくために。


「本当に気をつけてね。あんたには……あんた達には幸せになって欲しいわ」
 
真剣な顔で言うヒオウを、レイは軽く叩いた。

「つーか、オメーもだろ?」
 
ニッと笑うレイに、ヒオウは穏やかに笑った。


こんなに穏やかな時間が来るとは思ってもみなかった。

周りに対する気持ちを変えただけで景色が違って見えることを、レイは痛感していた。
 
ノアに出会えたことを、心から感謝している…。

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