NOAH
「…やっと、動いたか…クククク…」
 
次々に明るくなっていくのを感慨深げに眺めていたヒューイは、チラリと後ろを見やった。すぐに、何人かの部下がやってくる。

「後は予定通りに。奴を連れて来い。…丁重にな」

「はっ」
 
部下が去っていくのを、声を押し殺して笑いながら見送る。

「よくもまあ、こんな手の込んだ鍵を用意したものだ」

煌々と光を照らす円盤を見下ろし、喉を詰まらせて笑う。

「ディージェよ……」

かつて妻であった者の名前。

その名を呟く一瞬だけ。

ギラリとした瞳の輝きを沈黙させた……。




 
レイは、いきなり白い空間に放り出された。
 
あまりに真白なので、平衡感覚がおかしくなる。まっすぐ立っていられない。気分が悪くなってくる。

(なんだ、ここは…)
 
つい先程まで、薄暗い灰色の壁に囲まれていたのに…。
 

 
フォン、と軽い音を立て、何かが通り過ぎていった。
 
その方向に顔を向けると、青や白や黒の色が交じり合って、物凄い速さで去っていった。

不思議に思う間もなく、色んな色が次々に通り過ぎていく。

軽く吹く風が徐々に強くなっていくのと同時に、色がどんどん深くなる。
 
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