NOAH
もう目は開けていられない。
 
手足までもぎ取られそうな勢いだ。

(くっ…)
 
苦痛に顔を歪めた。
 
 
すると、フッ、と風が止み、体が開放された。前につんのめって転びそうになるのを何とか止める。
 
薄く目を開けてみる。
 
白い色が見えた。
 
また最初に戻ったのか……と、レイはゆっくり顔を上げた。

白いものしかなかったはずの空間。
 
しかし、今度はそうでなかった。
 
少し離れたところに、一人の女性が静かに佇んでいた。
 
赤みかかった長い髪に、白い白衣を着た女性。
 
レイは、ハッとした。
 
見たことがある。
 
この人は、見たことがある。
 
遠い昔、一度……いや、二度。
 
色あせた古い写真の中、生まれたばかりの自分を抱いていた、女性。

青い顔をして、やつれた顔で固く目を閉じていた、女性……。

 
心が震えた。
 
まさか、こうして目の前に現れるなんて。


「…か、あさん…」
 
震える声で、呼びかける。
 
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