NOAH
憎くて、憎くて、でも心の奥で求めていた存在を目の前にして、どんな顔をしたらいいのか、どんな言葉を出したらいいのか、分からない。

『レイ、ですね』
 
写真で見た笑顔そのままの母が語りかけてきた。

『私はディージェ=ルヴァンニール。……貴方の母です』

「っ…!」
 
何か言いたい。けれど、言葉が出てこない。
 
もどかしく思っていると、ディージェは言葉を続けた。

『貴方が私を見ているということは、『NOAH』が起動してしまったということですね』
 
『NOAH』──。
 
その言葉を聞いて、レイは自分が置かれている状況を思い出す。
  
「ここは一体? 何で死んだだずのあんたがここに? それに、あの『NOAH』というのは──」
 
レイは疑問を一気にぶつけた。しかし、ディージェはレイの言葉を遮り、淡々と話し始めた。

『良く聞いてください。今、貴方が見た星……あの星の人達は自分達の星を『地球』と呼んでいました。『NOAH』は、地球に飛ぶことの出来る転移装置なのです』

「ちょっと待ってくれ、俺の話を……」

『何十年も研究を続け、やっと完成させました。この装置を巡って、色んな争いが起きました…』

「……」
 
レイは、気付いた。
 
ディージェはレイのいる方向を見てはいるが、自分を見ているのではないのだと。

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