NOAH
『この星を放射能で汚染してしまった先の大戦も、『NOAH』を巡る争いなのです…。これのために、多くの命を犠牲にしてしましました…』
 
話し続けるディージェに手を伸ばし、触れてみる。
 
──触れなかった。
 
ジジジ、と体が揺れる。
 
立体映像だ。

(…そうだよな…。確かに、この人は死んだんだ)

この目で、その死を確認したのだ──。


『私は、この装置を壊そうとしました。けれど、出来なかった。長年かけて作り上げたものを、この手にかけることが出来なかったのです』
 
目を伏せる母の姿に、レイは同じく顔を歪めた。
 
彼女の話は耳に入れていた。しかし、その驚愕の事実よりも、この人は本当に死んだのだ、ということの方がレイには重い現実だった。

『レイ、これを動かしたのはヒューイですか? それとも、貴方が自分の手でパスワードを見つけたのですか?』
 
それは恐らく、ヒューイに嵌められたのだ……と、レイは心の中で答える。

『もし前者なら、『NOAH』は破壊してください。ヒューイに渡すと危険です。彼は恐ろしい事を考えているのです。
……あの星を侵略しようとしています。そんなことは避けねばなりません。
…でも、もし、貴方が自分で起動させたのなら……これを使って、リトゥナの再生の手伝いを、してください…。地球のデータは貴重です。きっと役に立ちます』

「……」
 
ディージェは、リトゥナ再生のために『NOAH』を開発したのか…。漠然とそう思った。
 
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