NOAH
砂漠を緑で埋め尽くすための研究をしていた母。
 
『NOAH』開発は恐らくその延長で…。他の惑星のデータを採るため、『NOAH』を使っていたのだろう。
 
しかしヒューイは…。
 
あの星を侵略しようと考え、そして…。
 
母を手にかけた。恐らく、そうだろう…。

 
両手をギュッと握り、ギリリと奥歯を鳴らした。

(ヒューイ…!!)


『…レイ。母を許してくださいね。貴方の傍にいられない、母を…』

「…かあ、さん…」

『レイ…。大きくなったのでしょうね。『NOAH』を起動させるには、成人した貴方のデータが必要だから…』

(大人ってほど大人にはなってねえけどな)
 
声が出ない。

『ごめんなさい。貴方を巻き込んでしまって…。貴方が、今、幸せなら……良い、のだけれど…』

(どうだろうな…)
 
泣きじゃくる母。

(ヤバイ事態になりそうだ…。あんたは分かってるんだろう? 何も知らなかった俺が、自力で起動させることなんて不可能だと)
 
滝のように涙を流す母につられ、レイも涙を流す。

(分かってるから、泣いてんだろ…?)
 
自分の息子がこれから辿る運命を、分かっているから。


『パスワードを、教えます…』

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