NOAH
その言葉を聞くと、ディージェの姿は消えてしまった。
 
そして、グッと体に重力がかかる。

「うっ…?」
 
気が付くと、煌々と白く輝く円盤の上に立っていた。

「…戻った…のか」
 
母への想いの余韻を消すように、グイッと涙の痕を拭った。


「お帰り。早かったな」

 
その声に振り向くと、憎々しい初老の男が部下を従えて立っていた。
 
ディージェのこともあり、レイは一層鋭い瞳をヒューイに向けた。

「さて、何を見てきた? まだ完全に作動したわけではないから、『P-AR-3』には行っていないのだろう?」
 
ヒューイの言葉が少しの間理解できなかったが、すぐにそれは『地球』のことだと解った。
 
『NOAH』は完全に作動したわけではなく、転移装置は稼動していないことも悟った。
 
ディージェは破壊のパスワードとともに、装置を動かすためのパスワードも遺した。母の言っていた事と、今の状況が徐々に糸で繋がってくる。

「私としてはすぐにでもこれを動かし、『P-AR-3』とここを繋いで欲しいのだが」

「…嫌だ」
 
きっぱりと言い放つと、ヒューイはクッと喉を鳴らした。

「その様子だとこれが何なのか理解しているようだが…。ディージェに逢ったか?」

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