NOAH
レイは答えなかった。
 
しかし、微妙な表情の変化で答えは覚られた。

「成る程。では聞いたはずだ。これを完全に復活させるパスワードを」

「……」

「言いたくないか?」
 
レイは、ただ睨み返した。
 
すると、ヒューイは不気味な程にこやかに笑った。

「お前はすぐに動かしてくれるさ。父に逆らったことのない、いい子だものな」

「なっ…」
 
レイは言い返そうとしたが──出来なかった。
 
ヒューイの後方にいる部下たちの間に、銀の髪を見つけて。

「…ノア!!」
 
レイはすぐに駆け寄ろうとするが、周りにいた者に押さえつけられ、それは叶わなかった。

「フン? ノアと言ったのか?」
 
ヒューイはノアを振り返る。

「面白い。お前の周りには『ノア』が〝二人〟か」

「なっ……なんでそこにいる? あんたの嫁だ。俺には関係ない!」
 
無駄だと知りつつも、知らん振りをしてみる。

「…だ、そうだ。可愛そうになあ」
 
ヒューイはノアに近寄り、長い銀の髪をさも愛しそうに撫でてやった。

そして、次には鋭いナイフの刃を、白い頬にピタリと張り付けた。
 
ハッと息を呑む。
 
その表情を見て、ヒューイは高らかに笑う。

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