NOAH
「愚かな息子よ。お前には罰を与えねばならん。…しかし、だ。お前は私にとって大事な息子だ。ここは、パスワードと引き換えにお前の命を助けてやろう」

「何っ…」

「取り引きに応じるだろう?」
 
ニヤリ、と笑いながら、ノアの頬に刃を食い込ませる。ノアの顔が恐怖に引きつった。

 
母の遺言は。
 
『NOAH』の破壊だ。
 
しかし。
 
今、目の前で愛しいものに危機が迫っている。
 
選択肢はふたつ。
 
『地球』を救うか。『ノア』を救うか。
 
「駄目だ、レイ! 言いなりになるんじゃない!」

ノアが必死の形相で叫んだ。
 
ヒューイはそれを一瞥すると、ヒュッとナイフを振り上げた。
 
小さな悲鳴が上がる。
 
白い肌から、鮮血が飛び散った…。

「…やめろ!」
 
レイは叫んだ。
 
その時点で、もう答えは決まっていた。

「分かった。パスワードは教える」

「いい子だ」
 
ヒューイは勝ち誇ったように笑った。

「すぐに準備を」
 
研究員達に指示を出し、部下達にはノアを連れて行くよう命令する。

「ノア! 待て!」
 
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