NOAH
追いかけようにも、未だ開放されない。ノアは僅かに振り返り、悲しそうな瞳をレイに向ける。そしてそのまま、連れ去られてしまった…。

「パスワードは教える! だからノアは離せ!」

「そうはいかんよ。私は、彼女にも罰を与えなければならないのだから」
 
それを聞いたレイは、頭に血が逆流しそうだった。
 
「約束が違う!」

「何を約束したのだね? 私はお前の命を助ける、と言ったのだよ。お前への罰と彼女への罰は別だからな」
 
その言葉に愕然とする。
 
自分の甘さに腹が立った。
 
同時に、何とかしてノアを助け出さねばと頭を巡らす。

「…ノアを助けないのなら、パスワードは教えない!」

「別に構わんよ。ではシオを殺す。…それでいいか?」

「『NOAH』が動かなくて困るのはあんただろ!?」

「シオが死んで困るのはお前だろう? …ああ、目の前で死に顔が見たいと言うならば、今すぐにここに連れて来るぞ?」
 
ヒューイは……やる。
 
恐ろしく平気な顔で、人の命を奪える男だ。レイのような子供が取り引き出来るような相手ではない。
   
< 140 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop