NOAH
「お前がどうしてもと言うなら、命までは奪わんさ。少し折檻する程度にしてやろう」

「……」
 
命までは奪わない…。
 
どこまで信じたらいいのだろう。
 
しかし、可能性が少しでもあるのなら、それに賭けたかった。

(でもタダじゃ教えねえ)
 
隙が出来るチャンスを作らなくては。

「…分かった。…言う通りにする。ノアを助けると言うならな」

「懸命だな」

「だけど! …少し時間をくれ。母さんが言っていたパスワードは、ただ入力するだけじゃ動かない。複雑なプログラムが組まれているんだ。数日か……それ以上の時間が欲しい」

時間をかければ、ヒオウあたりが異変に気付いて自分達を捜索してくれるかもしれない。

ほんの僅かな可能性だが、それに賭けてみるしかノアを助ける方法が思いつかなかった。

「良かろう」
 
その言葉を聞いて、一先ずホッとする。
 
だが…。
 
レイは解っていなかった。この男が、どれだけ恐ろしい人物なのかを。

「しかしな、レイ」
 
ヒューイの言葉に顔を上げる。

「なるべく急いだ方が良いぞ。長引けばそれだけシオが痛い目を見ることになるからな」
 
これ以上、何をするつもりなのか…。レイはヒューイを凝視した。
   
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