NOAH
「…終わった…」
 
レイは椅子を後ろに倒す勢いで立ち上がる。

「プログラムは完成した。ノアを解放しろ!」

「まだ装置は動いていないようですが」

「ノアが先だ!」

「ヒューイ様に伺います」
 
その言葉に、レイは舌打ちする。
 
ヒューイの命令がなければ自ら動く事も出来ない人形たち。

「早くしてくれ…」
 
苛立ちながら言う。


しばらくして、ヒューイ本人が現れた。

「プログラムが完成したそうだな。何故動かさない?」

「ノアの無事を確認してからだ」

「困った奴だな…。早くした方がいいと言ったはずだが?」

「ノアを解放するまで動かさないからな。これを動かせるのは俺だけだ。言う通りにした方がいいぞ」

「ほう? 言うようになったな」
 
ヒューイはしばらくレイを見つめていた。
 
そして、“飴”をくれてやらないと絶対に動きそうにない、と判断した。

「シオをここへ」

「はっ」
 
すぐにノアは連れてこられた。
 
しかしここで安心してはいけない。最後まで、気を抜いてはいけない。

「ノアを放せ」

「起動させるのが先だ」

「ノアが先だ」

「……」
 
ヒューイは軽く溜息すると、顎を杓った。ノアが離される。

『NOAH』全起動を目の前にして焦ったのか…。これが彼の初めての誤算、だった。

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