NOAH
(怪我……したのか?)
 
ぼんやりと考えていると、バタバタと足音が聞こえてきて、レイのいる部屋に勢い良く人が飛び込んできた。

「レイっ!」
 
長い黒髪をひとつに束ねた、大柄な美しい女は、入り口から少し入ったところで足を止めた。そして、目を潤ませてレイを見つめる。

「…レイ…」
 
顔をくしゃくしゃに歪め、ゆっくりとした動きでレイに抱きついた。

「レイ、目が覚めたのね……良かった……本当に良かった……」
 
レイは抱きついている人物を、不思議そうに眺めた。…この人が誰なのか、まったく分からない。
 
更に部屋に人が駆け込んできる。
 
白衣を着た背の高い男と、薄い茶色の長い髪の女、そして最後に先程の少女が入ってきた。

「あの…」
 
まったく見知らぬ顔ぶれに、だんだん不安になってきた。誰か知っている者はいないのか…。

「レイ?」
 
抱きついていた女がレイの異変に気付き、顔を上げた。

「どうしたの?」
 
女の瞳はレイを気遣っているようだったが、何だか怖くて、その視線から逃げた。

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