NOAH
「ヒューイ様」
 
少し慌てた様子の部下が部屋に入ってくる。

「何だ」

「実は…」
 
部下はヒューイに何かを耳打ちする。それを聞いたヒューイは険しい顔になった。

「何故制圧出来ない。十分な武力を与えたはずだぞ」

「はっ、それが予想以上の抵抗でして…。ヒューイ様、何卒お力を」

「まったく……どいつもこいつも使えん!」
 
ヒューイは憤慨しながら部屋を出て行こうとした。
 
だが、出口のところで一旦止まり。
 
くるりと振り返った。
 
振り向き際に、銃を発射させる。

避ける暇はなかった。
 
赤い血が目の前を点々と飛び散る。

「フン…。少しは気が紛れたな。…いい質が手に入ったと思ったが、かえって邪魔だったか…」
 
そう言いながらヒューイは早足で部屋を出て行く。

「……」
 
レイは、ゆっくりと振り返った。
 
ノアが、レイに視線を送る。唇を震わせて……何か言いかけて。倒れた。

「──ノア!!」
 
ノアの白い服が、胸の辺りから勢い良く紅に染まっていく。

「ノア……ノア! ノア!!」
 
叫んでも、ノアはピクリともしない。しかし、かすかに息をしているのが分かる。まだ生きている!
 
着ていた白衣をビリビリ破り、銃弾を受けたところを押さえる。

< 161 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop