NOAH
スラムの人々の進軍は止まらなかった。押し寄せてくる人々と、外から撃ちこまれる大砲。
 
国王軍は徐々に後退し、ついにはドームの政治の中枢である建物にまで侵入を許した。
 
何故ここまで力に差がついたのか。圧倒的に国王軍の方が有利な立場にいたはずなのに。

……恐らくは、心根の問題だったのだろう。ただ力で抑えられている者と、はっきりとした目的を持ち、命を懸けて戦いに挑んでいる者の差。

「レイとノアがいるとしたら、アタシの入った事のないところだわ。きっと、あそこよ」
 
ヒオウは研究棟と呼ばれる白い建物の一角を指差す。

「よし、ヒオウは先行して! あたし達はここを片付けてから向かう!」

「分かった!」
 
数人の共を連れ、研究棟の敷地内に入る。正面からではあっさり捕まってしまう。こっそり入れそうな裏口を探す。

「待ってなさいよ、レイ、ノア…!」



スラムの人々の快進撃を、ヒューイは大きなモニターで眺めていた。

「ここまでとは…。ヒューイ様、如何いたしましょう?」
 
部下が語りかけても、ヒューイは何も答えなかった。瞬きもせず、ただジッとモニターを見ていた。
 
そして。
 
フッと表情を崩した。

「…核を落とせ」

「はっ? …はい、どこに…」

「ここにだ」
 
当然、というようにヒューイは言う。

「し、しかし…」

「聞こえなかったか?」

「それでは私達は…」

「……」
 
ヒューイは面倒くさそうに片手を挙げると、銃を発射させた。

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