NOAH
「ヒュ、ヒューイ様!」
 
周りがどよめく。

「誰か、スイッチを押して来い。座標はここだ。間違えるな」

「……」
 
誰も、返事をする者はいなかった。『NOAH』を失った以上、ここから逃れられる所などないのだから。

「う……うわあああ!!」
 
ダアン、ダアン、と銃声が鳴った。それを合図に、そこにいた者全員が銃の引き金を引く。今まで抑圧されていた者に対しての、反撃を試みたのだ。
 
だが。
 
ヒューイはクッと笑った。

「馬鹿が」
 
血まみれになって倒れる部下たちを冷たい瞳で見下す。

こんなこともあろうかと、いつも防弾装備はしていた。それに、やられる前にやり返す腕前は持っている。
 
結局核爆弾のスイッチは自らの手で押す事になり、その足で研究棟へ向かった。
 
先程、連絡が入ったのだ。
 
レイがシオ──ノアを連れて『NOAH』転移盤に向かったと。

その報告を受けた時、彼の中で消えかかっていた野心が再燃した。

恐らく、まだ『NOAH』は転移機能を失っていない。レイとノア、二人とも苦しむようにと、ワザと急所をはずしておいて正解だった。
 
部下にはレイ達を足止めするように通達した。そして、自らも急ぎ、『NOAH』に向かう──。

「……」
 
ふと、急いでいた足を緩める。何かの気配が頭上でした。
 
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