NOAH
「くそ! さっきの鼠か!」
 
そう叫ぶヒューイの声。

(…止まった?)
 
騒ぎの中、ようやくヒューイの蹴りが止まったことに気付く。
 
ヒューイが腰に差していた短剣が目の前に見えた。
 
反射的にそれを引き抜く。そして、思い切り上体を起こし、全体重をかけてヒューイの体に突き刺した。

ヒューイはそれに気付き、銃を持っていない方の手で制そうとした。だが…。  

 
彼は、一瞬、躊躇した。


「ディー……」

ヒューイが、息を呑む。


そこに、レイの短剣が深く刺さってきた。

「はっ……」
 
それは腹部に、ズブズブと入り込んでいく。息が、出来なかった。
 
それを見届けるかのように、ノアは床に崩れ落ちる。

「グ……ぐあああっ!!」
 
ヒューイが咆哮する。

「何故だ……何故、お前たち親子は……私の邪魔をするのだ……何故……ディージェよ! 何故お前が私を滅ぼすのだ!!」
 
レイは髪の毛を掴まれ、グイ、と顔を上げさせられる。
 
口から大量に血を流し、苦痛に顔を歪める父の顔が目の前にあった。望んでいた光景が、今、目の前にあった…。

「ぐっ……はあ……レイ、よ……」
 
ヒューイは苦しそうに喘ぎながら、語りかけてきた。レイもヒューイ同様、大きく肩を揺らし、全身を駆け巡る痛みに身体を振るわせていた。

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