NOAH
「はいはい、そんな悲しそうな顔をしない! 元気出して、ねっ」
 
と、レイの頬にぶちゅうっ、と熱いベーゼを送った。

「うわああっ」
 
兄にキスをされ、叫ぶレイ。それを見てヒオウは更に笑った。

「ほら、元気出たでしょう?」

「う、うん…」
 
ウインクをしてみせる兄に、レイは苦笑した。
 
と、そこへ、黒髪の少女が入ってくる。 

その顔は少し強張っていた。

「あー……───」
 
少女、乃亜はレイには解らない言葉──この地球の言葉で、日本語というらしい──で喋る。それを聞いたヒオウは大笑いした。

「あっはははっ、見ちゃいけないもの見ちゃった、だって」
 
どうやら、先程の熱い口付けを見られていたらしい。

「えっ、違うよ、そんなんじゃ…」
 
レイは慌てて否定する。その言葉が通じたのか、乃亜はフッと顔を崩して、レイに近づいてきた。

「レイ、外、いこう」
 
と、手を差し出す。

「えっ、外?」

「外、きもちいい、天気、いい」
 
乃亜はまだうまくリトゥナ語を話せないらしく、単語での会話が主だった。目が覚めたときにカタコトの言葉だったのは、リトゥナ語を上手く話せなかったから、のようだ。

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