NOAH
「めっちゃめちゃかわいい女の子はいるしー」
 
口の周りにご飯粒をつけている雛を見て、にやける。

「ちょっと変わり者のお兄さんもいるけど……」

「ちょっと、何でアタシだけそんな表現なのよ」
 
陽央に突っ込まれるが、それは気にせず、話を続ける。

「こんな幸せな環境、他にないよなー」
 
心からの本音。
 
記憶がないことの不安や恐怖など、この大きな幸せに包み込まれてしまっている。きっと、本当の家族だって、こんな幸せは感じない……そう、思う。

「ひな、かわいー?」
 
皆が微妙に照れている中、雛だけは無邪気に喜んだ。

「うん、かわいいよー。世界一だよ」

「えへへー」
 
雛が喜んでいるのを見て、

「あんた、純粋無垢な少女まで惑わすような男にはならないでちょうだいね」
 
と、陽央が釘を刺した…。

 

食事が終わって後片付けをしていると、玄関のチャイムが鳴った。

「あっ」
 
皿を拭いていた黎は振り返る。

「黎くん、もういいから行ってらっしゃい」

「うんっ」
 
李苑に言われ、黎は皿を置くと、鞄を持って玄関へと走った。

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