NOAH
「お弁当、靴箱の上にあるからねー」

「はーい!」
 
元気良く返事をし、靴を履いてお弁当を持ち、扉を開ける。
 
そこには、黎と同じ制服を着た乃亜が笑顔で立っていた。

「おはよう、黎!」
 
二十センチ下からの元気いっぱいの笑顔に、黎も最高の笑顔を浮かべた。

「おはよう、乃亜!」
 
2人は挨拶を交わすと、互いの手が触れそうで触れない、微妙な距離を空けて歩き出した。

「行ってきまーす!」
 
いつものように元気良く学校へと向かう弟を見送り、陽央は軽くため息をついた。

「本当、うれしそうね、あの子は…」
 
黎の代わりに李苑の片付けを手伝いながら、そう呟く。

「黎はもう大検取ったんだから、わざわざ学校なんて通わなくてもいいのに……学費だって馬鹿にならないんだから」

「あら、気にしないで、それは大丈夫よ。奨学金貰ってるんだもの」
 
キュッと水道の蛇口を止め、李苑は微笑む。

「…迷惑かけるわね」

「大丈夫よ」
 
本当に申し訳なさそうな陽央に対し、彼が気を使わないようにと柔らかく微笑む李苑。

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