NOAH
黎は乃亜を押しのけると、そっと玄関のドアを開けてみた。

中はしん、と静まり返っている。どこにも異常はなさそうだったが……ただ一つ、リビングのドアが開けっぱなしになっていた。
 
乃亜を振り返り、そのドアを指差す。乃亜は首を振った。

「…ちゃんと閉めたはず」

その顔からは徐々に血の気が失われていった。

黎はここで待っているように目で合図すると、静かに中へと入っていき、開け放たれたリビングのドアから、そっと中を覗いてみた。
 
中は荒れていた。
 
リビングのサイドボードの引き出しはほとんどが開けられ、中の物が散乱していた。何度かこの家に遊びに来たことはあるけれど──このように散らかった状態の家ではなかった。

(泥棒!?)
 
明らかに異常な状態に、推測されることはただ一つ。

 
カタン…。

 
その時、階上で物音が聞こえた。
 
瞬間、黎は何も考えずに廊下に飛び出し、階段を駆け上がっていった。

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