NOAH
「黎っ!?」
 
玄関先からの乃亜の声に振り向きもせず、物音が聞こえたであろう部屋に勢い良く飛び込んだ。

部屋の西側の窓が開いていて、白いレースのカーテンが揺れている。その向こう側に人影が見えた。

(泥棒!)
 
瞬時にそう判断し、窓から飛び降りようとしている泥棒に飛びついた。
 
渾身の力を込めて泥棒を引き倒すと、一緒に掴んだカーテンがブチブチと音をたてて引き千切られた。
 
ドスン、と大きな音をたてて、泥棒と一緒に床に転がる。

はずみで力が緩み、泥棒はまた逃げようと立ち上がったが、すぐにタックルし、押さえつけた。

「乃亜っ! 警察! 警察呼んでっ!」
 
大声で叫ぶと、ドンドンドンと階段を駆け上がってくる足音が聞こえてきた。おそらくは乃亜だ。
 
すると、急に泥棒から力が抜け、おとなしくなった。

(観念したのかな?)
 
そう思ったが──その考えが甘かった。

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