NOAH
ヒオウの咎める声を無視して、そのまま冷たい床を裸足で歩いていく。

眩しい光の降り注ぐ大きな両開きの窓を開け放ち、空を仰いだ。

黄色い太陽が高い位置に見えたが、その光が直接ここに届く事はない。

放射能や紫外線を防ぐための、透明な天井が街全体を覆っているからだ。

目の前に咲き誇る色とりどりの花や植物も、すべて人工に造られたもの。手を伸ばしてそれらに触れ、あまりの無機質さに吐き気がした。乱暴に毟り取り、地面に投げ捨てる。


レイが生まれた頃、ここリトゥナでは戦争が勃発していた。

理由は土地の争い、経済摩擦、色々あるが──今いる地球の十分の一程しかない小さな星で、兵器を使った争いをすればどうなるか。


結果は解り切っていた筈なのに──。
 
人々は争いを止められなかった。
 
そして、当時一番権力を持っていた国の最高司令官であったレイの父、ヒューイにより、核爆弾が落とされた。
 
生物は死に絶え、自然は破壊され、大気は汚染された。
 
それで戦争は終結したが…。
 
今も人々は放射能汚染のため苦しんでいる。終戦から数年経った今も、人口は減り続けている。

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