NOAH
悔しい。
 
まるで監獄の中にいるかのような生活。

絶対的支配者と、逆らうことの許されない奴隷のような関係。──もう嫌だ。限界だった。

 
ヒオウに背を向け、歩き出す。
 
中庭に面した廊下に出て、明るい空を見上げた。美しい晴天から降り注ぐ光は眩しく、思わず目を閉じる。

「つまんねえ…」
 
ぽつり、と呟く。
 
このまま、ヒューイの監視のもと生き続けなければならないのか…。何も見出せないこの世界で。
 
それならば、いっそ…。

「あいつ、怒らせてやろうかな」
 
ゆっくり目を開き、振り向く。レイの後をついて来たヒオウが首を傾げる。

「あいつって……ヒューイ?」

「ああ、他に誰がいるんだよ」
 
太陽にやられた目を数回瞬きさせてから、レイはまた歩き出した。

「…ちょっと、何する気よ?」
 
青い顔をしてついてくるヒオウ。それを振り返り、レイは不敵な笑みを浮かべる。

「楽しみにしてろよ」

「ちょっとっ、アタシはあんたの死亡報告なんか聞きたくないわよーっ!」
 
ヒオウの怒鳴り声を無視し、レイは去っていった。

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