NOAH
シオは勢い良くソファから起き上がると、絨毯に這い蹲るレイを見下ろし、舌打ちした。

「こんのクソガキ! 思わずボロが出ちまっただろーが!」

「…?」
 
恐る恐る顔を上げる。
 
大きく息をつきながら辺りを伺うが……いるのは目の前にいるシオだけ。他に人は見当たらない。

「あー、くそっ、今までの苦労が水の泡だ、こんちくしょうっ」
 
長い銀の髪をかき上げ、そう毒づくのはまぎれもなく、目の前の美しい女性だ。

……おしとやかなイメージだった彼女から出た言葉とはとても思えない。一体何が起きたというのだ……。

 
混乱していると。
 
ガタンッ。
 
天井から物音がした。
 
次の瞬間。

「ぎゃあああっっ!!」
 
バリバリバリッ!!
 
ドスンッ!!
 
激しい音と叫び声が同時に響き渡った。
 
驚いてレイとシオが目線を向けた先には……ヒオウが転がっていた。

「う……うう」
 
しばらくしてヒオウは起き上がり、乱れた格好をしているシオを視界に入れた。そして、

「ぎゃあああっっ!!」

まるでムンクの叫びのような顔つきで叫んだ。

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