NOAH
それから、シオは何度かレイの部屋を訊ねてきた。

いつもメイド達が一緒なので、長い間話すことは出来ないが、何度か顔を合わせるうちに、最初に感じていた気まずさや不快感は薄れていった。
 
女とは思えない口の悪さや態度には少々驚かされたが、慣れれば何と言うことはなく、かえってサバサバした物言いに好感を持てるようになった。


「あ~、ホント、ここは落ち着くなあ」
 
と、革張りのソファに足を広げて座り、大きく伸びをするシオ。

「ああ、もう…。少しは女らしくしてちょうだいよ…。目のやり場に困るわ」
 
いつものようにレイの部屋に来ていたヒオウは、大きくスリットの入ったドレスから覗くシオの白い太腿に、少し顔を赤らめた。

「いいだろ、別に、気にすんなって」

「こっちは気にするのよ~」

「何だよ、ヒオウの方が女々しいぞ。あはははは」
 
この二人の会話を聞いていると、どちらも性別を間違えたのではないかと思わせた。それが面白いので、レイは大抵聞き役に回っている。

「それより、あんた達に何かお礼しようと思ってんだけどさ…」

「お礼?」
 
レイとヒオウは口を揃えて聞き返す。

「ああ。いつも世話になってるからな。何がいいか考えたんだけど…。あんた達は内緒で外に出られんの?」

「内緒でって…。まあ、別に外出に制限があるわけじゃないけど…」

「まあ、夜中にこっそり街に出たりはするわね」
 
ヒオウと顔を合わせながらそう言うと、シオは笑って頷いた。

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