NOAH
レイは二、三度シオとヒオウを見比べていたが、やがて意を決したかのように小走りに歩き出した。

「レイ、行くのっ!?」
 
ヒオウが小声で言う。

「ああ…」
 
レイは短く返事をすると、更に足を速めた。
 
その後姿を見て、ヒオウも恐々歩を進めた。


光の漏れていたところは広い階段だった。所々壊れたコンクリートの階段を、慎重に上っていく。
 
四階分ほど上がってきただろうか…。空気が更に清々しくなり、明かりが強まってきた。……出口のようだ。
 
 

建物の外に出ると、強い太陽の光が三人に降り注いだ。

「だ……大丈夫なの?」
 
ヒオウは深くフードを被り、弱々しく訊いてくる。

「平気さ。まあ、確かに紫外線は強いからな。フードは被っとけよ」

「放射能は…?」

「この辺りは心配ない。人体に影響が出る程残ってないよ。外に出られないっていうのは嘘の情報だからな」
 
シオは後ろを振り返る。

「ここが、爆心地からどれだけ離れてたと思う?」

シオの問いに、レイは一瞬間を置いた後、答えた。

「……二十キロ」

そう、教育を受けた。その答えに、シオはニイッと笑う。

「七十、だ」

「七十……!?」

レイもヒオウも驚きの声を上げる。

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