NOAH
「お前らは騙されているんだ。国に……親父に、な」

「……」
 
俄かには信じがたい話であった。頭の中の整理がつかない。
 
そんなレイとヒオウの心中を察したのか、シオは笑顔を見せ、また歩き出した。

「まずは見て歩くことだ。それから考えてみな」
 
歩き出したシオに、レイはゆっくりついていく。
 
何があるのかは分からない。ただ、自分が知らないことがここにある。それをこの目で確かめなければならない……そう、思った。


半壊したり、窓ガラスが飛び散ってしまったビル郡を見上げながら、砂の積もったアスファルトの上を歩いていくと、一際大きな建物があり、そこに入っていった。
 
中に入ってすぐ、銃を持った男が数人立っていた。

「おっす」
 
シオがストールを取り、手を挙げる。

「ノア! 久しぶりだ、元気だったか? 痛い目に遭っていないだろうな?」
 
皆、シオの周りに集まってくる。

(…ノア?)
 
シオが違う名で呼ばれていることに疑問を持ちながらも、黙ってその様子を窺う。

「平気さ。いい暮らしをさせてもらってるよ。皆も元気かい?」
 
シオは満面の笑みで人々に語りかけている。

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