NOAH
「おばさんはいつものとこかい?」
 
周りを見渡しながらシオが言う。

「ああ、顔を見せておいでよ」
 
近くに居た中年女性が答える。

「ありがと」
 
シオはその場を離れ、もと来た道を引き返していく。レイ達が付いていこうか迷っていると、

「何やってんだ、行くぞ!」
 
そう声をかけられ、慌てて後を追った。

先程入ってきたところまで戻り、逆方向に延びている通路を進んでいく。

たまに人とすれちがいながら歩いていき、たどり着いたところは温室らしいところだった。
 
むわっとした湿気のある暖かい空気がレイ達を包み込む。

広い室内にはたくさんの植物が栽培されており、そのほとんどは果物や野菜のようだった。

「…水があるのか! …本物の植物!?」
 
野菜の葉に触れたレイは驚きの声を上げた。

ドームの中では滅多に見ることのない、生きた植物。その下、根の部分はゆったりと流れる水に浸かっていた。

「こんなに大量の水、どこから…」

「地下から汲み上げているのもあるけど、ほとんどはどこからか流れてきてるものを使ってる。
昔街のあった方から流れてきてるんだ。もしかしたらそのあたりに人がいるのかもしれないな。放射能の残っているところがあって、全部の地域と連絡がとれてないから、はっきり分からないんだけど……」

< 94 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop