僕は忘れるんでしょうか
第1章【邂逅】―to meet―
―樽の中の黒い湖は夜空に映える夏の月を放そうとしない―
いつからこんな安いセリフを思いつくようになったんだ?
そんなこと考えても意味ないか…どうせ…
「おいガキ!酒はまだか!!」
「今お持ちします!」
不意をつかれたオレは条件反射のようにいつの間にか口が動いていた
「てめえよぉだ〜れのおかげでヘッヘッ生きているんだ?」
――でた…いつもの
「親分です」
「もっと声張れぇい!お前の父親は誰だ!?」
「親分です!」
――これって声張れなきゃダメ?
「もっとだ!!神は誰だ!?」
「親分です!!」
――そろそろ疲れた
「うるせー!!!!!」
――んな理不尽な…
だがこれを酒場でやる時は親分の機嫌が良いときである
すると少し離れた釘がむき出しになったテーブルから、フードで顔がよく見えない男が
「……だまれイベリコ豚…」
オレがせっかく体を張った…いや声を張ったヨイショが泡となって消えていった
しかし、これがオレと先生との出会いだった
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