僕は忘れるんでしょうか
そういって紹介された店はアンティーク調の古い扉の出入口がまず目につき、視線を上に上げると“フィレンツェ”と命名され斜めに傾いている老木の看板が出迎える
中に入ってみるとこの店には似つかわない若い女性の「いらっしゃいませ〜!」という2種類の声が狭い店内の奥から聞こえる
たぶんカウンター席の横にある扉の先にいるのであろう
レッドは客がまったくいない店内をさらっと見回した後、近くのテーブル席ではなくカウンター席に座りシオンと共に腰を下ろした
「おやっさ〜ん!ハラ減ってっからとりあえず“ダラダラパスタ”2っつ!!」
レッドが目の前の小さな食器入れから取り出したフォークとスプーンの柄の部分を木製のテーブルにガンガン叩き注文する
「分かった!分かった!そっちのも同じでいいか?」
「あっ!はいっ!それでお願いします!」
――なんかマズそうだけど…まいっか…
それを聞くと、そそくさと彼は水も出さずに横の扉へ消えていった
「…レッドさん……もしかしてここがイイトコですか…?」
「イッエ〜ス♪なんだ?イメージしてたのと違ってたか?」
「はい!てっきり野いちご的に表現アウトなムフフな場所かと」
「んなわけねーだろ!そんなこと書いたら女性の読者様から反感を買うだろ!よく考えろっ!」
「はっ、はい!サーセンでした!」
なんだか裏事情過ぎる理由で怒られたシオンにはこれ以上言い返すことが出来なかった
「そんでだ…わざわざお前を誘った訳だが…」
レッドが両手に持っていた食器を置き語り始める